前回紹介したスピッツの「三日月ロック」のように、ミスチルのアルバムを二つに大別するとしたら「IT’S A WONDERFUL WORLD」以降とそれ以前といっても過言ではないでしょう。
偶然か、「IT’S」 と「三日月ロック」は発売時期も似ていて両方2002年です。
「IT’S」以降、ポップバンドの王者としての地位を確立したミスチルですが、現在のミスチル最新アルバム「重力と呼吸」では、小林Pと離れてロックバンドとして素晴らしいアルバムを聴かせてくれていますので、これからのロックなミスチルにもキタイ。
アルバムの全体像
このアルバムは、ポップなミスチルの自己紹介とでもいうべき優等生な秀逸曲が並んでいます。
一口に優等生といっても独自の切り口を持つ桜井さんの作詞は非凡で、面白く日常を切り取った「one two three」、皮肉の効いた「LOVEはじめました」、王道的でありながらもありふれていないラブソング「Drawing」「君が好き」など、このアルバムの曲世界はなんて素晴らしい世界でしょう。
このアルバムは特に作曲・編曲も素晴らしく、ミスチルのバンド演奏と小林さんのプロデュースのバランスが取れていて、桜井さんのメロディに最大限効果的なポップアレンジが加わることによってバラエティー豊かなサウンドが実現し、音楽の無限の可能性を提示することに成功しているようです。
曲の感想
1~2曲目 overture~蘇生
約2分のインスト曲「overture」から、ジャカジャーンなギターが炸裂するこのアルバムのリード曲「蘇生」へとつながる。
「何度でも生まれ変わっていく」という力強い歌詞とメロディーが印象的な「蘇生」によって、一気にアルバムに引き込みます。
3曲目 Dear wonderful world
このアルバムの最終曲(15曲目)「It’s a wonderful world」と共に、アルバムのコンセプト部分を担う大事な曲。日本語にすると素晴らしい世界にようこそ。
特にこの三曲目は、前後の曲のつながりをよくしている潤滑油的存在。
4曲目 one two three
名メロディーに名歌詞で、肩の力の抜けた応援歌。
こんな複雑なメロディーを、こんなにポップなソングに仕立て上げたミスチルには脱帽します。
6曲目 youthful days
まさにキャッチーなパワーを持った曲で、一般的にミスチルといったらこんな曲、というイメージを120%持ったシングル曲。
アレンジ、メロディー、歌詞どれも大変素晴らしいので、ミスチルファンじゃなくても、もちろん長年のミスチルファンにも文句なしに刺さっているであろう名曲。
7曲目 ファスナー
スガシカオ的歌詞を目指して桜井さんが書かれたというこの曲。
アダルトな歌詞にクールな桜井さんの大人なボーカルの魅力が大きく出ていてかっこいい。
スガシカオのアルバム「sugarless2」に収録されている「ファスナー」のスガさんカバーバージョンを聴いてスガシカオにハマったのは別の話。
8曲目 Bird Cage
アルバムに一曲はあるダークサイドのミスチル曲。
他の曲にはないシリアスさとかっこよさを持つ曲で、遊び心のある次曲「Loveはじめました」と共に、アルバムに深みをもたらしています。
10曲目 UFO
普通のラブソングのような曲であってもこんなにいい曲にできるのは桜井さんの持って生まれた才能としか言いようがないですね。
曲を支えるベースラインにも注目して聴いてほしい一曲。この曲がアルバムに収録されずにボツになっていた可能性があるというのは信じられないですね。
11曲目 Drawing
歌詞とアレンジがパーフェクトにかみ合っている超絶神曲。
この雰囲気に包まれて、穏やかな世界がいつまでも消えることなく時を刻んでいけたならこれ以上のことはありません。
12曲目 君が好き
イントロからガッツリ心を掴まれ、最後まで無駄なものは何一つない。
ストレートなラブソングでありながら、何度聴いてもしみる名曲。
「Drawing」→「君が好き」→「いつでも微笑みを」というアルバムの流れによってさらに名曲度が増しているのです。
最後に
15曲70分という大作ですが重くなく、ポップなミスチルをこれでもかと堪能できるアルバムが「IT’S A WONDERFUL WORLD」です。
5thアルバム「深海」から9thアルバム「Q」まで続いたロックなサウンドから一度離れ、10周年の10枚目としてポップな新生ミスチルが誕生した記念碑アルバム。
その完成度は非常に高く、ミスチルの中でも屈指の名盤と言えるでしょう。
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