スピッツのアルバムを二つに大別するとしたら三日月ロック以降とそれ以前。という印象を僕は持っています。
三日月ロック以降はスピッツのバンド演奏が地に足ついたという印象で、スピッツという安定的な土台の上にアルバムごとのカラーをのせているというイメージがあります。
また、草野さんの書く歌詞の傾向も三日月ロック以前は抽象的な独特の世界が多くある傾向ですが、三日月以降は具体性が増してきているところがあるような。
そんなわけで、後期スピッツの始まりと言える三日月ロック、アルバムレビューです。
アルバムの全体像
このアルバムは、シンプルなスピッツのバンド演奏を堪能できる一枚になっています。
例えば、「ローテク・ロマンティカ」・「ハネモノ」・「エスカルゴ」あたりの飾らないバンドサウンドは、実はあまり他のアルバムでは聴けない気がします。
そんな曲が中心となっているので、ロックファンには絶対聴いてほしい。(ロックファンはほぼスピッツは聴いていると思いますが。)
通して聴いても、「ババロア」のような実験曲や、「海を見に行こう」などバンドサウンド一辺倒にならないような工夫、
そのうえ、「さわって・変わって」・「遥か」・「ガーベラ」などの一種のポップさも忘れずアルバムに溶け込ませることができるのがスピッツです。
曲の感想
1曲目 夜を駆ける
曲中冴え渡るキーボードリフと、四本くらいは入っていそうな厚いギターサウンドが素敵な名曲。
演奏も歌詞も、この曲名にとても似合っていて幻想的な世界観を作り出しています。
2曲目 水色の街
前曲と関連性がありそうな気がするのは気のせいでしょうか。
こちらも同じく幻想的であり、ハードなバンド演奏が世界観を表現している名曲。
4曲目 ミカンズのテーマ
可愛らしい歌詞、こじんまりした世界観とは裏腹にエレキギターの演奏がおにかっこいい曲。
もちろんベースとドラムの演奏もかっこよくて好きです。
6曲目 ローテク・ロマンティカ
ギター・ベース・ドラム一斉に勢いよく始まり、Aメロに入ると一旦落ち着き、各コーラス2回目のAメロでまた勢いよく演奏に入るというアレンジが最高。
曲最後のAメロ部分は転調して盛り上げているというのも大変グッド。
7曲目 ハネモノ
ローテク・ロマンティカからこの曲に繋がるのが非常に心地よい。
この曲は逆に、曲が進むにつれて徐々に音が増えていき、サビで爆発するという開放感が楽しい神曲。
全体的にシンプルでありながら、各パートに見せ場が用意されていてドラマチックに展開していく。
僕の中でとても素晴らしいバンドアレンジの一つのお手本である曲と言えます。
8曲目 海を見に行こう
小休止的な、アコースティックサウンドが中心となっている曲。
もちろん意図的にこの位置に配置されていて、ハネモノとエスカルゴをつなぐ役割を担っていると思います。
9曲目 エスカルゴ
スピッツ流ロックンロールナンバー。
痺れるほどかっこいいエレキギターのバッキングや、激しいイントロのドラム連打などがありながら、サビはどこまでもキャッチー。
この曲もめちゃ好きです。
12曲目 旅の途中
アルバムのラストという雰囲気を醸し出したミディアムナンバーとなっていて、ゆったり流れていくバンド演奏が肝です。
まだまだ続く旅の途中。過去を振り返ったりしながら。
13曲目 けもの道
旅の途中からまさかの13曲目に突入。未来へのけもの道と、こんなアルバムの終わり方もあるということを示した傑作。
曲の最後のフレフレという直接的な応援のような歌詞は、やはり今までの草野さんからは考えられないような表現に思いました。
ただし、ウレウレという風に歌っているように聞こえるのは天邪鬼な草野さんのささやかな抵抗でしょうか笑
最後に
もともとの自分たちの音楽性を追求していくスピッツの始まりとして、まずプレーンなバンドサウンドをフィーチャーした三日月ロック。
音楽に何を求めているかで、人によって好きなアルバムは変わると思いますが、ギター・ベース・ドラムのかっこいいサウンドを求めている僕にとってはこのシンプルな味付けがマイベスト。
三日月ロックは、世間的にも特にスピッツの中で人気なアルバムの一つです。
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